早見慶子の十条日記 » 2008» 9月

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そうそう、セントラルパークの続きなんだけど、TODOさんが「ここでよく結婚式が行なわれるんだよ」って言ってた。公園で結婚式ってアメリカっぽくていい。

日本ではきちんと式場であげる。両親への別れをでもあり、涙がつきものだ。ニューヨークではたぶんハッピーな顔で結婚式をしているんだろうナ。

もちろん最近は日本でも結婚式を挙げない人も増えてきた。披露宴だけする場合だってある。

でも公園はあまり聞かない。たぶん日本の公園のスペースでは結婚式はちょっと狭いような気がする。それに人の視線も気になるだろうし。

ニューヨークでは習慣や文化の違いと共存する共同体のせいか、他人の行動に干渉しない。だから片方でホームレスが寝ていて、片方で結婚式がきちんと共存できている。

 自然の環境でたまたま居合わせた人もヒューヒューっていう声援をかけたり、「Congratulations」「Good Luck」なんて声が飛び交い、頬を染めながら思わず微笑む新郎新婦。

 お金をかけなくても最高のエールが飛んでくる。そんなシーンが目に浮かんできた。

 さて、そう思ったついでにベンチの様子を見てきた。悲しいかな日本ではホームレスが眠れないようにするため、高いお金をかけてベンチの間に肘掛をつくり、横になれないようにしてしまった。

 ここセントラルパークでは、両方存在していた。肘掛のあるベンチとないベンチ。階段状の腰掛けられるスペースをねぐらにしているホームレスもいるようだ。

 もちろんベンチの肘掛があってもサイズは日本と違い、もっと広いスペースだ。

芝生の周りの柵は日本より高い。この中に入っていいものかどうか悩む。柵を乗り越える人は誰もいない。ちゃんと入り口から入っている。ここアメリカでは、「ダメ」と書いてないことはすべてOKらしい。TODOさんが言っていた。

 もしどうしても入って欲しくないなら、高い塀を築くだろう。入れるところは注意されるまで、いても可能なんだという。

 ピラミッドの研究をするため、ピラミッドに入ったドランヴァロ。ナイルの間が入っていけないようになっていたけれど、監視の人がいないので入って調べた。そして注意されてから出ていったと書いてあった。

 そういう文化なんだろう。本当はみんな共有の財産だ。破壊せず、大切に扱う限り、富を分かち合ったらいいのに。

 夜の公園を散歩したわけではないので、深夜何が起こっているかはわからない。けれど、昼間は平和な公園だった。

 たぶん夜はいろんな闇行為があるに違いない。夜中にあの広さでは目が行き届かない。それとも入れないのだろうか?

 日本ではホームレスを収容施設に閉じ込めようとする。社会関係がイヤになってリタイアした人にとってはキツい世界だと思う。

 だって狭いところに人が集ってケンカになるのは当然だ。家族、職場、満員電車、そういう空間ではイライラがつのる。

 その点、公園の広さはノビノビできる。ここアメリカでは自由を大切にしてきたせいだろう。異質な世界の人々が、自由気ままな文化を表現する。

 日本の上野公園によくいる似顔絵を描く人も無数にいる。上野公園とセントラルパークの違いは、上野ではお客があまりいないけれど、セントラルパークでは自分の絵を描いてもらっている人が必ずいるということだ。

 だから、私もデッサンの特訓をすれば、ここセントラルパークで商売できるチャンスがあるということだ。

みんな一枚くらいは自分の自画像を持っているのかもしれない。それを額に入れて宝にする。アメリカの住居は広く、先祖代々の自画像が並べられている。そう、映画のように階段を歩くたび、私、ママ、パパ、グランドマザー・・・っていうふうに並んでいて。

そんな家の風景が浮かんできた。セントラルパーク。まだまだ発見のあるスペースだった。


TODOさんからどこか見たいところがあるか聞かれた。いろいろ案内をしてくれるそうだ。アシストを頼むとお金がかかるところを善意で引き受けてくれた。

私はあまりあちこち観光地をまわるより、ただ人や街を眺めていたかった。

東京にいても公園めぐりの好きな私は「ステキな公園があったらみたいな。それでどんな人が歩いているのか、ただ観察したいんだ」と話した。

彼はセントラルパークに連れていってくれた。とても大きな公園だ。地図でみると地下鉄の駅がいくつもある。それだけ広く、まわりきるのに1日では絶対ムリだ。

地下鉄だけでなく、公園にも自動販売機はない。そのかわり、いろんなところでジュースとアイスクリームを売っている。

木々を見ていると落ち着く。噴水もあるし、動物園もある。池だってちゃんとあってあきることはない。

メープルガーデン風の小屋もあり、きれいにガーデニングされた花が咲き乱れている。スポーツも十分にできる広さがあり、野球だってできるところもある。もちろんテニスも。

ニューヨークの街では自動車と一緒に自転車タクシーもある。それ以上に目立つのが馬車だ。自転車ダクシーはこぐ人が体力を使うだろう。その点馬車は馬が働いてくれるから、風流でありながら楽だ。

この馬車が自動車道路を堂々と歩いているのだから、日本の東京では考えられない光景だ。それだけ、自動車やバスが急いで走っていなんだろう。なんだかのどかだ。

 それとも8月のせいだからだろうか?

このマンハッタンに住む人々はどこかにバカンスに出かけてほとんど人気がない。その分旅行者で賑わっているというわけだ。そう、私もその一人。

 あちこちから音楽が聞こえる。大道芸人が得意の楽器を奏でている。

 小さな子どもがギターケースにコインを投げ込む。そのまま歩いていったから、お金を出すために通ったに違いない。

 たぶん親が、クリエイティブなことに生きる人を応援しているに違いない。そして、子どもにもコインを投げ込むような習慣にして欲しいから、そうしているんだろう。

私はその姿を見て思わずお札を入れた。日本でお札は千円からだけれど、ドルは1ドルからあるので、ちょっとした気持ちをさりげなく表現しやすい。

このセントラルパークではセミの鳴き声がしなかった。ちょっと生態系が違うのだろう。スズメがとても多く、小鳥の鳴き声があちこちから聞こえてくる。

 そのせいか、爽やかな印象で、心地よく芝生で寝ている人々が結構いる。ちょうどいい子守唄に違いない。

 鳩もいるけれど、カラスはいなかった。だからあの「カア、カア」という響きは「チュッ、チュッ」というさえずりで何だかとても幸せな気分になれた。

 気に入ったのがリス。けっこう気に周りにいる。宿のオーナーのODAさんが「あれは台湾リスなんだよ。噛まれると破傷風になっちゃうから気をつけたほうがいいよ。食品か何かを一緒に台湾から運ばれてきたんだって」と語った。

こっそり隠れてきたリスがこんなに増えてしまうの? その話って本当かな?って思った。でも台湾から来たリスであることは間違いないらしい。

 このリスはセントラルパークだけじゃなく、ルーズベルトアイランドにもいた。

 とてもかわいいので、すっとソバで観察していた。リスってすごく身軽に木に登ったり降りたりするんだなって感心した。

 子どもたちの顔にペイントする人たちもいた。顔を猫にしたり、犬にしたり、蝶にしたりする。

 そんな顔にしてもらった、子どもが喜んで走る。こういう商売をしようっていうのが、ニューヨークなんだろう。遊び心っていいな。

 このセントラルパークが気に入ったので、ここを拠点にすることにした。

 だから毎日セントラルパークに通って本を読んだ。自然や人間の様子を伺いながら、本を読む。何てゆったりとした贅沢なんだろう。

 とても広い公園だから圧迫感がない。もしマンハッタンに来たら、一度はセントラルパークに寄ってみたらいいだろう。

 ただ、トイレだけは難点だ。男女別れておらず、ボックス型のものがいくつかある。水洗じゃないから、汚いけれど、もちろん様式だ。

 男女一緒だから座る便座は汚れていて、座ることができない。っていうことは女性は使えないってことだ。う~ん、何でこんなにトイレで苦労するのだろうか?

 


2008/9/9 火曜日

ニューヨークの交通

Author: 早見 慶子

 さて、ニューヨークの交通は地下鉄がメインだ。それにバス。地下鉄も路線地図が駅に設置してあるから、それを使うといい。バスマップあるので、組み合わせると便利だ。

 私の泊まっている部屋から、地下鉄の駅はとても近い。だからいつもこの地下鉄を愛用することにした。

 一週間25ドルのフリーパスのメトロカードがある。これ一枚で地下鉄、バスもすべて無料だ。入るときはカードを使い、出るときは必要ない。ニューヨークではどこでもそうだ。

 入ったときにチェックしている。価格はどこまで乗っても同じ。だから出るときチェックする手間が省けるってわけらしい。いかにも合理的でシンプルだ。

 マップでは地下鉄はA、B、C、D、E、Fなどの表記になっている。「えっこんなに簡単なの?」と思った。

 マップとシンプルな記号はその地域に疎い旅行者にはとても助かるシステムだ。さすがに世界の人々が集る都市らしい、わかりやすさだ。

 日本の交通のことを考える。埼京線、山の手線、常磐線、西武池袋線など、長い漢字が風流といえば、そうなのだが、外国人にとっては面倒に違いない。

 それに新宿駅の埼京線や新しくできた副都心線なんて最悪だ。どこのホームにいたらきちんと連れていってくれるのか、日本人でさえ、わからない。

 いつも新宿では慌てて、電光掲示板を見逃すと、また戻って確認する。それから、1,2番線ホームに降りるか、3,4番線ホームに降りるか決定できる代物だ。だから外国人に聞かれても、説明できない。

 ああ、やっぱり島国のうちわの文化なんだと実感する。

 さて、ニューヨークの地下鉄は日本のようにエアコンがなく暑い。トイレのない駅もあるから、気をつけたほうがいい。ホームも日本のほうがきれいだと思う。改修工事を日本のようにマメにしてないからだろう。

 トイレがなく、エアコンもなく、自動販売機や便利なお店もない。ただ、運ぶだけ。その分安いので、それでいいのだろう。だって一ヶ月87ドルらしいから、1日3ドルに満たない。それで何回もどこまでも乗り放題だったらそれでいい。

 何もないかわりにどこでも音楽を演奏する人がいる。いわゆる大道芸人だ。エスニックが多いから、スパニッシュ系の人が演奏しているのだろう。彼らは電車の中でも演奏する。

 そうすると乗客も喜んでいる。音楽が始まると、「おっ」という顔をしてから、決まってゆるんだ笑顔にかわっていく。小銭稼ぎなのだろう。

 駅でスケッチをしている人もいる。そんな一人に「アー ユー アーチスト?」と声をかける女性がいた。「アイム オールソウ」と共感を示す。

 何か志す人にニューヨークの街はエールを送る。どこか開放的で爽やかさが漂う。

 乗り換え場所で道に迷っても、みんな親切に教えてくれる。日本のように座席が座りにくい雰囲気はない。みんなマナーがいいのには驚く。「エクスキューズ ミー」「アイム ソーリー」という言葉が小さな子どもからも自然に発せられる。

 だから日本のように降りるときに無言のまま、人波を押しのける現象は一度も体験せずにすんだ。

 だから私の印象では、客のマナーは断然ニューヨークのほうがいいと感じた。

 ただ、バスや地下鉄の運転は日本の運転手のほうがていねいだ。だからどこかにつかまっていないと、倒れる可能性がとても大きい。日本では足だけふんばっている自信があったが、ニューヨークではムリなことがわかった。

それに日本のほうが時刻表に忠実だ。だってニューヨークには時刻表がない。そんなものは守れないから不要なのだそうだ。働く人にとっては時間をうるさく言われないアメリカのほうが楽に違いない。

 そう、日本人は時間にせっかちなのだ。

 さらにニューヨークでは地下鉄は24時間動いている。それにタイアップして、お店も24時間営業しているから便利だ。

 私は24時間営業のダンキンドーナツが近くにあったので、毎日のようにコーヒーを飲みに行っていた。自動販売機がなく、日本にもあるので勝手がわかっているせいもあって気楽に入れる。

 マクドナルドではレギュラーかラージだけれど、ダンキンではスモールがある。日本のようにトイレがないか、貸してくれないお店が多いから、飲みすぎは禁物だ。

 アメリカではミルクやシュガーは必要か聞いてきて、すでに入れたものを出される。たぶん日本のように外に置いておくと持っていかれるからだろう。

 スターバックスは大きなポットにさまざまミルクが入っていて、それをそぞぐようになっていた。これも日本とは違う。一個ずつのミルクになれた日本人にとっては衛生的には見えないかもしれない。

 どこか神経質にさわぐ日本人より好感がもてる気がした。たぶん私は冒険が好きで、過保護な安全より、ワイルドなものを好むからなんだろう。

 地下鉄の希望に満ちた歌声をいつかまた聞けるときがあればいいな、と思った。


 私のパソコンに一通のメールが来た。ニューヨークからだったので、かなりワクワクした。それからたまにメールのをやりとりをするようになった。

なぜか私はメールがあまり好きじゃない。以前から、電話が苦手だったようにメールが苦手らしい。

仕事が終わってから、家に帰ると夜の九時か十時になってしまう。それから少し本を読もうと思っても、電話によって中断され、思うように進まない。手紙を書いていても何度も電話で中断されると書く意欲がなくなってしまう。

メールはさらに厳しい。人のことを気遣っているようで、返信が遅いと、人間関係に対する配慮がないヤツだと思われてしまう。特に日本人は繊細だから返事を気にしてしまう。特に複雑な内容だと、「何か気に入らないから、返事が来ないの?」と心配する。だから早く返信するのが思いやりっていうことになっている。

 電話ならいないとつながらない。けれど、メールは違う。私は本を出すために仕事をパートにしたので、書くか本を読むかどちらかの状態の毎日だ。どちらも意識をそっちに飛ばしているので、どうしてもメールを見る気にならないことがある。気づくと2,3日はたってしまう。

 だから普通の人より、失礼な人間なのだ。

 そんな私にとって、たまに見るメールにニューヨークの人からだとそれだけで、ワクワクする。よし、TODOさんをたよりに遠出をしてみようと思った。 ツアーのほうが安いけれど、一人でチケットをとって、ヘタな英語で旅する楽しみ。

 ギリギリに航空券をとったので、直行便をとれなかった。だからデトロイトで乗り継ぎをするフライトだ。ちゃんと乗り換えられるだろうか?成田空港でさえ、よくわからないというのに。

 そんな不安があるからこそ、旅は楽しい。

到着はニューアーク空港。ちょっと遠いらしく、アシストの女性が迎えに来てくれた。

 ニューヨークに留学し、そのまま仕事をしている、だから親不幸なんだけど、こっちのほうがおもしろい、と話していた。とても自立しているんだろうな、親の反対押し切って一人でいるんだから。

宿泊先はルームシェアリング形式なので、一泊40ドルと格安だ。

ニューヨークでは1泊30000ドルのホテルもあるらしい。普通の人には考えられない贅沢だ。

 私はイエルムではアリーナでシュラフで寝ていたので、このくらいでも贅沢だと思った。ちゃんとしたベッドがあり、オーナーが仕事に行っている間はシャワールームも独占できるし。

その日、12時過ぎたのに帰って来ないから、ベッドに戻った。ダイニングキッチンではアシストの女性がずっとオーナーの人を待っている。支払いをしているのに、何で待っているんだろう?

もしかしたら親しい関係かもしれない。だって夜中の12時までいるんだもの。

 そのうち音がした。男性の透る声が響く。缶ビールをあけるシュワッという音。ああ、お酒飲むんだな・・・

 女性と肩こりの話をしている。

「肩が凝るなら、逆立ちをするといいよ」と男性がアドバイスをしている。

「壁にもたれるだけでいいし、頭をついてもいいし。ヨガにそういうポーズあるよね」

「私、毎日腕立てと腹筋はしてるんだけど、痩せなくて」とスマートなのにお腹のことを気にしている。やっぱり女性の悩みはどこでも同じなのか? 

 たいてい腕立てや腹筋なんて三日坊主で終わる人がほとんどだから、信念がある人なんだろう。

「女性はね。体質的に30分以上運動しないと痩せないようにできているんだよ。」

 うん、確かに内臓脂肪は男性に多く、皮下脂肪は女性に多い。内臓脂肪のほうが、健康上問題が多いけれど、運動ですぐ減っていくという。

ところが皮下脂肪を減らすのってとても大変らしい。アア、それでは私のお腹も希望がないってこと?

 そんな会話を聞いていたけれど、彼女の帰る気配はない。仕事だけの関係なら、もう帰ってもいい頃なのに。ビールの缶を開けるコキっ、シュワーっていう音が何度も聞こえる。

 起きているけど、「こんにちわ」って登場したら失礼かも。どうしよう。私はオーナーの年齢も顔も知らない。

 うん、声から容姿をイメージするのもおもしろいだろう。その声は予備校の先生を務める森河君に似ている。

自信ありそうなハッキリした発音と大きないい声。自論を展開するのは自分の考え方に自信があることを証明している。

 私は森河君がいるような感じになり、明日会うほうが楽しみが増える気がした。だから声をかけなかった。そのうち、彼女が帰ったらしい。女性の声が聞こえなくなった。

 どうやら私の勘ぐりは思いすごしだったらしい。ニューヨークの地下鉄は24時間動いているのだから。だから日本のように終電、という境目がない。

 日本なら終電間際に帰らなければ、泊まっていくことを意味する。そう、異性に対する好意の見逃してはならないサインだ。でもここニューヨークはそんなニュアンスは通用しない。

ちゃんと言葉で表現する必要のある街なんだろう。その分誤解がなくていいのかもしれない。